大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)4355号 判決

本件記録を精査すれば、被告人に対する公訴事実は塩酸コカイン二五瓦入小瓶一本を所持していたというのであるのに、原判決が認めた事実は被告人は塩酸コカイン二五瓦入瓶五本燐酸コデイン二五瓦入瓶一本を所持したものであるということは所論のとおりである。

さて訴因は罪となるべき事実を特定してしなければならない。そして麻薬所持罪にあつては、所持の日時場所の外麻薬の種類数量は罪となるべき事実を特定する事項であつて、裁判所はその訴因の範囲内において審理判決すべきである。しかし公訴事実と同一性を有する限りは必ずしも訴因のとおり種類、数量を認定しなければならないものではないが、明示された麻薬の種類数量と著しく異る種類又は多量の数量を認定する場合には公訴事実の訴因変更の手続を履践しなければならないものと解するのを相当とする。

しかる本件において被告人に対する公訴事実中の塩酸コカイン二五瓦入一本を所持していたと云う事実と、原判決認定の前掲事実とは同一性を有するが、目的物の種類数量が著しく異る。しかるに原審は訴因変更の手続をした形跡は認められない。(なお本件においては起訴状の単なる誤記とは到底認められない)しからば原判決は審判の請求をうけない事件について審判したという違法はないが、訴訟手続違背の違法があり、右違法は判決に影響あること明白であるから、原判決は到底破棄を免れない。論旨は結局理由がある。

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